消化器疾患とは

お腹のイメージ写真

当クリニックでは、日本消化器病学会が認定する消化器病専門医をはじめ、日本消化管学会が認定する胃腸科認定医/専門医、日本消化器内視鏡学会が認定する消化器内視鏡専門医/指導医、日本食道学会が認定する食道科認定医、日本肝臓学会が認定する肝臓専門医等、日本ヘリコバクター学会が認定するH.pylori(ピロリ菌)感染症認定医、日本消化器外科学会の認定する日本消化器外科学会認定医など、数々の消化器関連の認定医/専門医の資格をもつ院長が消化器疾患の診察、検査、治療を行います。

なお、消化器疾患となる対象部位(器官)については、消化管(口、食道、胃、小腸、大腸、肛門まで全長約9mの管状の臓器)と、それに連なっている胆嚢、肝臓、膵臓、脾臓などで、これらにみられる病気を中心に診療いたします。

消化器疾患の検査は、当院で検査可能な消化管(食道、胃、十二指腸、小腸の一部、大腸)については、血液検査・レントゲン検査・内視鏡検査を中心に行ってまいります。
胆嚢、肝臓、膵臓、脾臓に関しては、腹部超音波検査(腹部エコー検査)や血液検査を中心に診断を行ってまいります。
さらにCT検査やMRI検査が必要な場合は、提携病院や画像検査センターなどで検査を行っていただき、撮影画像を当クリニックで診断させていただきます。
腹痛や嘔吐、胸やけ、胃もたれ、下痢、便秘などの消化器症状がみられた際は、受診をおすすめいたします。

消化器がんは早期発見が重要

また、診察や検査などにより、消化器がんが見つかったとしても、早期に発見することができれば外科手術を行わずに内視鏡治療など体の負担の少ない治療が選択できる可能性が高くなります。
外科治療になったとしても、腹腔鏡手術などの低侵襲手術(体への負担が少ない手術)で対応できる可能性があります。
そして命を失う危険が非常に少ない状況で治療に当たれることが何よりも早期発見のメリットです。
消化器がんの早期発見には、がんができる可能性が高い患者様に定期的な検査を行うことが重要です。
例えば胃癌ならばピロリ菌に一度かかったことがある方(除菌していない方はもちろん、除菌治療された方も)や、肝臓癌ならば肝炎ウイルス感染や肝硬変の方などです。
また、現在医療機関にかかられていない方もがん検診や特定健診に積極的に受診していただくことで、症状の出ない早期の病気を見つけられる機会が増えるでしょう。
消化器がんの早期発見のため、ぜひ受診していただくことをお勧めします。
院長の25年以上の臨床経験(消化器がんの検診、診断、治療そして治療後の体調管理)が、皆様の健康管理のお役に立てればと考えております。どうぞお気軽にご相談ください。

こんな症状はご相談ください(例)

  • お腹の調子が悪い
  • 胃が痛い
  • 胃もたれがする
  • 吐き気がする
  • 胸やけがする
  • 便秘がちである
  • 下痢を繰り返す
  • 血便が出た
  • 食欲が無い
  • 急に体重が減少した
  • 顔色が悪いと言われる など

消化管関連でよくみられる主な疾患

  • 逆流性食道炎
  • 胃炎
  • 胃・十二指腸潰瘍
  • 胃がん
  • 胃ポリープ
  • 胃粘膜下腫瘍
  • 大腸がん
  • 大腸ポリープ
  • ピロリ菌感染症
  • 感染性胃腸炎
  • 機能性消化管障害
  • 便秘症
  • 過敏性腸症候群(IBS)
  • 潰瘍性大腸炎など

肝臓、胆嚢、膵臓、脾臓の主な疾患

  • 肝硬変
  • 肝炎(ウイルス性肝炎、アルコール性肝炎、NASH)
  • 脂肪肝(アルコール性、NAFLD)
  • 肝臓がん
  • 胆嚢がん
  • 胆管がん
  • 胆嚢結石(胆石)
  • 胆嚢炎
  • 総胆管結石
  • 胆管炎
  • 急性、慢性膵臓炎
  • 膵嚢胞(IPMN、MCNなど)
  • 膵臓がん
  • 脾種 など

よく見られる代表的な消化器疾患

逆流性食道炎

胃内で消化途中である食物(胃液含む)が食道へ逆流してしまうことで、食道が炎症を起こしてしまい、びらん(粘膜のみの傷)や潰瘍が生じてしまうのが逆流性食道炎です。
主な症状は、胸やけ、酸っぱい液体が口まで上がってくるほか、みぞおちの痛み、胸が締め付けられるような痛み、咳、背部痛などがみられます。

胃内は食物を消化するため、強い酸性の胃酸が含まれた胃液が分泌されています。
この胃酸の食道への逆流により、食道が何らかの障害を受けることによって症状が起きるようになります。
なお逆流の原因には、食道裂孔ヘルニアの存在や下部食道括約筋の緩み、腹腔内圧の上昇などが考えられます。

胃・十二指腸潰瘍

胃や十二指腸の壁が内側から粘膜よりも深くえぐられている状態を胃潰瘍もしくは十二指腸潰瘍と言います。
これらは、何らかの原因があって胃粘膜が障害を受けたことがきっかけとなり潰瘍が起きたと考えられています。
主な症状としては、みぞおちの痛み、吐き気や吐血が見られ、さらに悪化すると胃や十二指腸に穴が開くこと(穿孔)もあります。

発症の原因はピロリ菌に感染しているケースが最も多く、次に痛み止めの薬(NSAIDs)が続きます。
ほかに喫煙やストレスなどが挙げられます。

胃炎

胃炎とは胃の炎症ですが、一般にむかつきやもたれ、胃部の膨満感、上腹部の痛みなどの症状があるものをいい、以前から様々な分類が行われてきました。
胃炎の概念は大きく3つあります。
1番目はみぞおちが痛いなど症状を中心にして診断される症候性胃炎という考えかた。
2番目は胃内視鏡検査(胃カメラ)を行って粘膜が赤いなど胃カメラの所見で診断される内視鏡的胃炎。
3番目がピロリ菌感染による胃粘膜の組織学的変化により診断される組織学的胃炎です。
他に急性胃炎、慢性胃炎という言い方もあります。
これは症状が急に起こってきたものか、慢性的に起こっているものなのかの区別ですが、急性胃炎の原因ではNSAIDsと呼ばれる痛み止めによる薬剤性の胃炎が多いです。
慢性胃炎の原因はほとんどがピロリ菌感染と言われています。

1番目の症候性胃炎はピロリ菌感染がきっかけであることが多いのですが、ピロリ菌を除菌しても症状がとれない方が多数いらっしゃいます。
このように症状のとれない方は機能性ディスペプシア(FD)とよばれ、胃の運動能力低下や蠕動運動の障害などにより食物が消化管内に停滞し、胃痛やもたれ感、胃部膨満感などを起こしていると考えられています。
また消化管の知覚過敏も一因ともいわれています。
原因はストレスなどの心理的要因やウイルス感染後の症状ではないかと言われています。
最近発表された胃炎分類は「京都分類」で、これは2番目と3番目の概念を関連付けた分類でピロリ菌の感染有無と胃内視鏡所見(胃カメラ所見)を組み合わせて、将来の胃癌になり危険度を判定するために考えられました。

胃内視鏡所見(胃カメラ所見)をピロリ菌未感染、現感染、既感染(除菌治療後)に分けて考えます。
活動性胃炎(現感染)ではピロリ菌が感染すると胃粘膜が赤く腫れます(びまん性発赤)、その後治ることなく慢性化し、粘膜は薄くなり(胃粘膜萎縮)その後胃粘膜が腸の粘膜に置き換わります(腸上皮化生)。
活動性胃炎を検査で見たら、胃がんができやすい状態なので、ピロリ菌が本当にいるかどうかすぐに検査しているようなら除菌治療を行います。
除菌がうまくいっても胃がんになる危険は少し残りますので、除菌後も定期的な胃カメラ検査は必要です。
非活動性胃炎(既感染)はピロリ菌が除菌された後か自然に除菌された状態で、ピロリ菌がいた痕跡(胃粘膜萎縮など)があります。
まだ胃がんになる危険が残っていますので、この場合も定期的な胃カメラ検査が必要です。
非胃炎(ピロリ菌未感染)では胃がんになるリスクはほとんどありませんが、ごくまれにスキルス胃がんなどの発生が認められます。そのため何年かに一度は胃カメラを受けたほうが良いと思われます。

胃がん

胃粘膜から発生する悪性腫瘍で、欧米人に比較して日本人における発生頻度が高いがんの一つです。
主な原因はピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)の感染です。
ピロリ菌感染のない胃がんはごくごく少数であるからです。
ピロリ菌の感染に加え、以前から指摘されている喫煙、塩分の多い食事などのさまざまな因子も関係して胃がんが発生していると考えられています。
ちなみに胃がんは、発症初期での自覚症状はほとんどありません。
そのため、逆流性食道炎、胆石や胃潰瘍などによる腹痛が疑われて行った上部消化管内視鏡検査(胃カメラ検査)や健康診断や人間ドックでの同検査時に偶然早期胃がんが発見されることが多いです。

なお、胃がんは進行すると症状が現れるようになります。
腹痛、食欲低下、体重減少、貧血、嘔吐・吐き気などが見られます。
進行してしまった場合(進行胃がん)は、治療のために開腹手術が必要になります。
進行胃がんでは手術治療が行われる場合でも、多くの場合抗がん剤治療が手術前や手術後あるいはその両方に加えられます。
また進行しすぎて開腹手術での切除のメリットがないと判断された場合は抗がん剤による治療や、場合によっては積極的な治療は行わず痛みなどの症状を和らげる緩和ケアが中心となります。
このような状態にならないためにも、日頃から通常の定期的な健康診断に加えて胃がん検診も受診されることをお勧めします。
自治体の検診(胃がんハイリスク検診や胃がん検診)も当クリニックでお受けしております。
検診結果については、一人ひとりに胃がんになりやすい胃なのか、適切な検査法や間隔などをアドバイスさせていただいております。お気軽にご相談ください。
なお、検診などで思いがけず早期胃がんが発見されても、多くの方で内視鏡切除(胃カメラによる切除)や腹腔鏡下手術などの縮小手術(体の負担が少ない手術)で治療することができます。
適切な治療を受けられれば、早期胃がんならば9割以上の方が完治いたします。

大腸がん

大腸粘膜から発生する悪性腫瘍で、2017年にがんで死亡した人のなかで男女合わせると肺がんについで2番目に多いがんです。
大腸がんは盲腸からS状結腸にできるがんを結腸がん、直腸にできるがんを直腸がんと分けられます。
大腸がんの発生には生活習慣との関係が指摘されています。
肉(牛、豚、羊など)や加工肉(ベーコン、ハム、ソーセージなど)の摂取、飲酒、喫煙により大腸がんなる危険が高くなります。
また、家族の病歴が非常に重要で、特に家族性大腸腺腫症(ある遺伝子の関係で大腸にたくさんポリープができる病気で同じ家系になる人が多い)やリンチ症候群(ある遺伝子の関係で若くして大腸がんや子宮体がんになりやすい体質で、胃がん、卵巣がん、腎盂・尿管・膀胱がん、十二指腸がんなども発症しやすい)の方がいらっしゃる家系では、近親者に50歳代までに大腸がんの発生が多くみられます。

大腸がんの主な症状には、血便、下痢や便秘の繰り返し、残便感、腹部膨満感、体重減少などがあります。
ただ初期の段階では、これらの症状がでないこともあるので、なかなか気づきにくいです。
そのため、健康診断で行う便潜血検査で陽性になったことをきっかけに、大腸内視鏡検査を受けたところ大腸がんが見つかり、早期に治療することができたというケースも少なくありません。
痔からの出血や硬い便でお尻が切れて出血したため便潜血検査が陽性になったと思っても、大腸内視鏡検査をぜひ受けていただきたいです。
また大腸がんは、早期であれば内視鏡で切除することで治癒できる可能性が高いですが、ある程度進行してしまうと他の臓器やリンパ節に転移するおそれがあります。
その場合は外科的切除(開腹手術や腹腔鏡下手術)や、手術の前に抗がん剤の治療を行ってから、結腸あるいは直腸の外科的な切除(開腹手術)を行ったり、結腸あるいは直腸の外科的な切除(開腹手術)だけでなく、がんが転移した臓器がある場合はそちらも治療(外科的な切除や抗がん剤治療、放射線治療など)する必要があります。
また、外科的な手術によって見える範囲の病巣がすべて切除できたとしても、進行がんでは再発予防のため術後に抗がん剤治療を(3~)6か月程度の外来での投与が必要になることが多いです。

大腸がんは多くの場合、良性ポリープ(腺腫)から大腸がんになっていきます。
当クリニックで便潜血陽性のため内視鏡検査を受けられる方や症状があって内視鏡検査を受けられる場合、検査中に発見されたポリープについてその場で検査医とポリープの性格や今後のポリープの増大予測、切除の必要性(すべてのポリープががんになる可能性が高いわけではありません)などについて相談しながら、対応させていただきます。

潰瘍性大腸炎

大腸に炎症を起こす病気で、国が定めた「指定難病」の一つです。
多くの場合、自己免疫反応の異常、あるいは食生活の変化の関与などが考えられていますが、まだ原因は不明です。
近年患者数が非常に多くなってきている病気の一つです。
20歳代の若い人の発症が多い病気ですが、最近では40歳以降の発症も多くなってきています。

大腸及び小腸の粘膜に慢性の炎症または潰瘍をひきおこす原因不明の疾患の総称を「炎症性腸疾患」と言いますが、潰瘍性大腸炎は大腸のみに炎症を起こす炎症性腸疾患です。
潰瘍性大腸炎では主に大腸の粘膜と粘膜下層(粘膜の下の層)に炎症を起こします。
ほぼすべての潰瘍性大腸炎はびらんや潰瘍が肛門近くの直腸粘膜から始まり、口側に向かって広がります。
病変の範囲によって、直腸炎型(直腸のみに病変あり)、左側大腸炎型(左側の結腸と直腸に病変あり)、全大腸炎型(すべての結腸と直腸に病変あり)に大きく分けられます。ごく稀に右側あるいは区域性大腸炎を呈するものがありますが、後述のクローン病や腸結核との鑑別が難しいことが多いです。

症状は主に下痢や血便が認められ、腹痛を伴うこともあります。
それに加え発熱、体重減少、貧血などの症状が出ることもあります。
また腸管以外の合併症として、皮膚の症状、関節や眼の症状が出現することもあります。
これはほかの自己免疫疾患(自己免疫反応の異常による病気)を合併することがあるからです。

診断は下痢や血便を起こす感染症(感染性腸炎)などではないことを確認し、症状や血液検査や大腸内視鏡検査、病理組織検査などの所見を総合的に検討して行います。

潰瘍性大腸炎には経過の過程で、炎症が起きて症状が強く現れる「活動期」と、症状が治まっている「寛解期」があります。一度、治療等により寛解期になっても再び活動期になってしまう人もいます。

治療は一般的に薬による内科的治療が行われます。
しかし、重症の場合や薬物療法が効かない場合には手術が必要となります。

潰瘍性大腸炎を内科的治療で完治することはできませんが、腸の炎症を抑える有効な薬は以前に比べて種類も増えて、現在通常外来で使用できるものが数種類存在します。
治療の目的は大腸粘膜の異常な炎症を抑え、症状をコントロールすることです。

当クリニックでは患者様の症状や重症度に合わせた投薬治療を外来で行ってまいります。
適時、大腸内視鏡検査や採血、場合によっては腸管炎症のチェック(便中カルプロテクチン測定)を行いながら治療を行ってまいります。
外来通院での薬物療法でコントロールが不十分な場合は適時、入院加療等の可能な関連医療機関等へのご紹介をさせていただきます。
ご希望の医療機関がございましたらご遠慮なくお申し出ください。対応させていただきます。

このように潰瘍性大腸炎の経過では治療により寛解期を維持することが大切です。
治療をきちんと続ければ多くの人は寛解を維持することができますが、人によっては過度なストレスなどがきっかけとなって再燃して、前述のように活動期と寛解期を繰り返してしまうこともあります。
そしてもう一つ大切なことは、潰瘍性大腸炎を発病して7~8年すると大腸癌を合併する方が出てきます。
特に全大腸炎型で発症後10年以降に大腸がんの発生が多いと言われています。
潰瘍性大腸炎の方では大腸がんの早期発見の意味でも大腸内視鏡検査は非常に大切です。

クローン病

クローン病も潰瘍性大腸炎と同じく国が定めた「指定難病」で炎症性腸疾患の一つです。
主に小腸や大腸などの消化管に炎症が起きることによりびらんや潰瘍ができる原因不明の病気です。
最近ではなんらかの遺伝的な素因に加え、食事や腸内細菌に対して腸管のリンパ球などの免疫を担当する細胞が過剰に反応して病気の発症、増悪にいたるのではと考えられています。
潰瘍性大腸炎と同じく主として若年者にみられ、こちらも患者数が近年増加傾向にあります。
消化管のどの部位にも炎症や潰瘍が起こることがありますが、多くは小腸と大腸で特に小腸末端部が好発部位です。
潰瘍性大腸炎と違い、消化管の中にある病変と病変の間に正常な部分があることが特徴です。
症状は腹痛や下痢、血便、体重減少など潰瘍性大腸炎に似ています。
またクローン病では炎症は粘膜から始まり、粘膜下層、固有筋層と進行していきます。
腸管壁の深くまで炎症が進行すると、瘻孔(腸と腸、あるいは腸と他の臓器や皮膚がつながる)、狭窄(腸が狭くなる)、膿瘍(腸の壁などに膿がたまる)、穿孔(腸に穴が開く)などの腸管の合併症が起こることがあります。
その他に関節炎、虹彩炎、結節性紅斑、肛門部病変(痔瘻、痔瘻がん)などの腸管外の合併症も多く認めるため、多彩な症状を呈します。

診断には症状と小腸造影検査、小腸内視鏡検査、大腸内視鏡検査や病理組織検査などの所見から総合的に行います。
当クリニックで大腸内視鏡検査にてクローン病が疑われた場合は、追加の検査が必要なため対応可能な医療機関へご紹介させていただくことになります。

治療は、内科治療(栄養療法や薬物療法など)が中心となりますが、腸閉塞や穿孔、膿瘍などの合併症には外科治療が必要となります。