B型・C型ウイルス肝炎とは

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B型・C型ウイルス肝炎とは、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)による感染症です。

当クリニックは、東京都肝臓専門医療機関です。
B型・C型ウイルス肝炎の治療については国が医療費の助成を実施しており、東京都の場合は医療費助成の申請手続きに必要な診断書については、日本肝臓学会が認定する肝臓専門医が作成することになっております。
診断、治療をご希望の際は、同学会の肝臓専門医である当院長の診療をお受けください。

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B型ウイルス肝炎

B型ウイルス肝炎は、肝臓にHBVが感染することで炎症(肝炎)が起きている状態を言います。
そして肝炎が長期間にわたり続くようになると肝硬変、さらに肝がんを発症することもあります。
HBVの主な感染経路は2つあり、一つは垂直感染といい母親がHBVに感染していると、出産のときに産道で血液を介して子供が感染してしまう経路です。
感染した子供は免疫が未熟のため、HBVを排除できず無症候性キャリア(HBVに感染しても肝炎の症状が無く健康な人)となります。
成人になると免疫機構が働き、HBVを排除しようとして肝炎が起こります。症状は倦怠感、食欲不振、吐き気や黄疸などです。
そのうち約10%が慢性肝炎に移行し、そのほかの方は肝炎が落ち着いた状態(非活動性キャリア)やほぼ正常に近い状態(臨床的寛解)に向かいます。
HBV感染者のうち約1~2%の方が肝硬変、肝がんを発症します。
現在は母子感染防止策がとられており、新たな母子感染はほとんど起きていません。
もう一つの経路は水平感染(母子感染以外の感染)です。
以前は医療従事者の針刺し事故や予防接種での注射器の使いまわし、HBVに汚染された血液の輸血に伴う感染がありました。
しかし、ワクチンの接種や医療環境の整備、献血された血液に対する適切な検査の結果、これらを原因としたHBVの感染は現在ではほとんど起きていません。
現在の感染原因としては、性交渉、ピアスの穴開けや入れ墨の器具や麻薬の注射針の使いまわしなどが挙げられます。
成人になってからHBVに初めて感染した場合は20~30%の人が急性肝炎を発症しますが(一過性感染の顕性感染)、ほとんどの方が治癒します(非活動性キャリアから一部は臨床的寛解という見た目では病気なのかわからない状態)になっていきます。
しかし1%程度劇症肝炎という重症な状態となりお亡くなりになる方(約1%)もいらっしゃいます。
肝炎を発症しない70~80%の方は自然治癒します(一過性感染の不顕性感染)。
急性肝炎の症状はHBV感染後、数ヵ月の潜伏期間を経て、倦怠感、食欲不振、吐き気、黄疸などの症状があらわれます。
急性肝炎の場合でも、不顕性感染の場合でも、症状がおさまった後はウイルスが体から排除されており、HBVに対する免疫を獲得するため、再びHBVに感染することはありませんが、通常は体に影響が出ない程度のごく微量のHBVが肝臓に残ります。
このため、将来何らかのがんにかかって抗がん剤などを使用するような場合に、HBVが再び増殖してくる可能性があり注意が必要です(HBVの再活性化)。

一方で感染したHBVが体から排除されず、6ヵ月以上にわたって肝臓の中にすみつくことで(持続感染)、一部の方は慢性肝炎を発症します。
慢性肝炎とは、通常6ヵ月以上肝炎が続いている状態(血液検査でAST,ALTが上昇)をいいます。
慢性肝炎の多くは、出産時や幼児期に感染した無症候性キャリアからの発症です。

治療については、B型急性肝炎の場合は、一般に肝庇護療法によりほとんどの方は治癒しますが、劇症肝炎になり死亡することもありますので注意が必要です。
B型慢性肝炎の場合は、ウイルスを体から排除することはほぼ不可能で、治療の目的はHBVの増殖を抑え、肝硬変への進展や肝がんの発症を防ぐことになります。
治療法は抗ウイルス療法(インターフェロン(IFN)や核酸アナログ製剤)です。

慢性B型肝炎の方はもちろん、無症候性キャリアや非活動性キャリアの方も頻度の差はありますが定期的な検査が必要です。

C型ウイルス肝炎

C型ウイルス肝炎は、HCVに感染している方の血液や体液を介して発症する肝疾患です。
感染経路はB型ウイルス肝炎と同じく垂直感染(母子感染)と水平感染です。
C型ウイルス肝炎では垂直肝炎は少なくHCV感染の母親から生まれる子供の感染率は約10~15%で、感染しても3歳までに約30%が自然治癒します。
HCVに現在かかっている方のほとんどが過去の輸血や注射による感染です(水平感染)。
現在はピアスの穴あけや麻薬・覚せい剤の注射、入れ墨、医療現場での針刺し事故などによる感染がみられます。
HCVはB型肝炎ウイルスより感染力は弱く、性交渉や体液で感染することはほとんどありません。

HCVに感染した後の経過には、急性肝炎を発症する場合(顕性感染)と、自覚症状がない場合(不顕性感染)があります。
症状はB型急性肝炎と同じで感染後、数ヵ月の潜伏期間を経て、倦怠感、食欲不振、吐き気、黄疸などの症状があらわれます。
顕性感染でも不顕性感染でも、ウイルスが自然に排除されると免疫を獲得して再びHCVに感染することはありません(一過性感染と言います)。
急性肝炎の約30%は一過性感染で、残りの約70%は感染したウイルスが体から排除されず、肝臓の中にすみつきます。
これを持続感染(HCVキャリア)と言います。
一部の人はB型ウイルス肝炎と同様に6か月以上肝炎が続き慢性肝炎(血液検査でAST,ALTの上昇)となります。
C型ウイルス肝炎はゆっくりではありますが、肝臓の線維化とともに慢性肝炎から肝硬変、肝がんへと進展していきます。

治療はC型急性肝炎ではB型急性肝炎と同じく安静と肝庇護療法ですが、慢性化することが多いです。
劇症肝炎を発症することは稀です。
慢性C型肝炎ではインターフェロンやインターフェロンを用いないインターフェロンフリー治療(直接作用型抗ウイルス薬:DAAを使用)、肝庇護療法などが行われます。

慢性C型肝炎の方はもちろん、症状がないHCVキャリアの方も肝臓に異常が隠れていることも少なくありませんので定期的に検査を受けることをおすすめします。